原題:The Silent Teacher/撮影地:台湾/製作国:台湾
監督:ロビン・バーンウェル
本作は、医学の研究のために大学へ遺体を提供する「献体」をめぐる愛と決意を描いたドキュメンタリー映画。 献体として大学に保管されている徐玉娥さん。そして、解剖が行われるまで度々彼女に会いに行く夫の林惠宗さん。 そして、「献体」に疑問を持つ娘との葛藤…。 最愛の妻であり、母でもある一人の女性の“生の終わり方”に対して、夫や家族はどのように向き合っていくのか。 映画は、夫と娘の激しく揺れ動く心の内に深く迫っていく。 台湾では、献体者を“大体老師(=無言の先生)”と尊称する。 こうした文化は、欧米には見られない華人社会独特の文化だ。 解剖学教室で、いよいよ解剖が行われるとき、夫は、家族は、何を思い、どう受け止めるのか――。
鑑賞日:11月22日
時間:15時
制作年:2017
作品時間:73分
本作を手掛けた陳志漢監督は、10年以上にわたり映画を撮り続けてきた実績のある監督ですが、 長編ドキュメンタリー映画に取り組んだのはこれが初めてです。 初のドキュメンタリーでは、大胆にも中華社会でタブー視される「生と死」をテーマに取り上げ、 私たちが、死についてどのように向き合い、どのように生きるべきかを観客に鋭く問いかけています。 “大体老師”の教えは、決して単なる人体解剖の知識や技術だけでなく、人間としての尊厳、 生きることの意味や価値、そして家族の愛の深さやその重みについてまで静かに説いているのです。 また人間は、ただ漫然と生きるだけではなく、自分自身で生きる意志を強く持たなければ、 人生の最期としっかりと向き合う覚悟は持てません。このドキュメンタリー映画からは、 そうした凛として美しい人間のひとつの理想的な生き様が見えてくるのです。
◆株式会社アジアンドキュメンタリーズ 代表取締役社長 兼 編集責任者◆
2018年8月に動画配信サービス「アジアンドキュメンタリーズ」を立ち上げて以来、 ドキュメンタリー映画のキュレーターとして、 独自の視点でアジアの社会問題に鋭く斬り込む作品を日本に配信。 ドキュメンタリー作家としては、映文連アワードグランプリ、 ギャラクシー賞などの受賞実績がある。
愛と別れの間で揺れる家族の心。
無言の先生が教える、生の最後のかたち。
娘と夫、葛藤の先に見える理解と決意。