原題:SHADOW GAME/撮影地:セルビア、ギリシャ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、クロアチア、マケドニア/製作国:オランダ
監督:エーフィエ・ブランケフォールト、エルス・ファン・ドリール
セルビアやボスニアなどの東欧諸国には、 アジアやアフリカから逃れてきた多くの若者が潜伏している。 弾圧や内戦の恐怖から逃れ、平穏な暮らしを求める彼らの目指す先は、 イタリア、フランス、英国などの先進国だ。 橋の下や難民キャンプなど、棲家を転々としながら、 何千キロにもおよぶ道のりを徒歩で進んでゆく。 猛獣の脅威に怯えながら山の中を駆け抜け、国境にたどり着く。 しかしそこで待っているのは、電気柵と警備隊の監視。 見つかれば、殴る蹴るの暴行を加えられた後に追い返される。 彼らは恐怖心に打ち勝つために、危険だらけの国境越えを「ゲーム」と呼び、 失敗しても何度もトライする。密入国者たちを取り巻く過酷な環境と、 彼らの切実な思いに迫る作品。
鑑賞日:3月19日
時間:19時
年制作:2021
作品時間:90分
EU加盟国を中心とした欧州27カ国間では、 国境検査を撤廃した「シェンゲン協定」を結んでいます。 参加国のハンガリーやクロアチアに接した非参加国のセルビア、 ボスニアなどには、多くの移民が集まり、 国境越えのチャンスを窺っています。 参加国への入国を認められれば、 移民であってもパスポートなしで域内移動が可能になるためです。 しかし2015年、中東や北アフリカなどから大量の人々がEU内に流入。 難民申請者の数が前年の56万人から125万人に急増しました。 「難民危機」と呼ばれるこの現象により、 ドイツ、オーストリア、ハンガリーなどは緊急対応として、 国境管理を再導入。それでも不法入国者は後を絶たず、 EUによると、加盟国とスイスノルウェーでの2023年の難民申請は114万人と、 難民危機以来の100万人超えを記録しました。
◆ドキュメンタリー フォトグラファー◆
2006年、世界第二の高峰K2(8611m/パキスタン)に日本人女性として初めて登頂。 植村直己冒険賞受賞。やがて風土に生きる人間の暮らしに惹かれ、草原や沙漠を旅しながらフォトグラファーを志す。 2012年からシリア内戦・難民をテーマに撮影。著書に『人間の土地へ』(2020年/集英社インターナショナル)など。 2021年5月、第8回山本美香記念国際ジャーナリスト賞受賞。
◆株式会社アジアンドキュメンタリーズ 代表取締役社長 兼 編集責任者◆
2018年8月に動画配信サービス「アジアンドキュメンタリーズ」を立ち上げて以来、 ドキュメンタリー映画のキュレーターとして、 独自の視点でアジアの社会問題に鋭く斬り込む作品を日本に配信。 ドキュメンタリー作家としては、映文連アワードグランプリ、 ギャラクシー賞などの受賞実績がある。