原題:Radiograph of a Family/撮影地:イラン/製作国:ノルウェー、イラン、スイス
監督:フィルゼ・コスロヴァーニ
西洋文化に染まった父と、敬虔なイスラム教徒の母。対照的な二人が辿る運命はいずれも、イラン革命を境に一変した。スイスで放射線医の研修課程を履修中のフセインは、帰省中に出会った女性ターイと恋に落ちプロポーズ。ターイは彼の求婚を受け入れ、スイスでの生活が始まった。飲酒、肌の露出、祈らない夫の姿……ターイは世俗化した暮らしに罪悪感を覚えながらも、フセインの要求に応えていった。妊娠を機に、渋る夫を説得してテヘランに戻った二人。西洋化が進み、様変わりした街に戸惑うターイだったが、ある宗教学者との出会いが彼女を変えた。二人の間に起きた摩擦と、二人が抱える孤独を、作品監督である娘が記録した回想録仕立てのドキュメンタリーだ。
鑑賞日:10月10日
時間:15時
制作年:2020
作品時間:80分
イラン・イスラム革命は単なる政権交代ではなく、個人の生活様式と「家族のあり方」を根底から変貌させた歴史的な出来事でした。革命後のイランは「法学者による統治」という神権政治へ移行。この体制下では、西洋的な世俗主義は「イスラムの価値観」に反するものとして抑圧の対象とされました。クラシック音楽を含む外国音楽や裸婦画、カードゲーム、飲酒などは禁止。学問や女性の服装などについても厳しく制限されました。作品中では、ヒジャブを被らない女性の写真を破り捨てるという「過去の検閲」も行なっています。革命は、最も親密なはずの家族の間にさえ価値観の断絶をもたらし、私的な空間にまで国家のイデオロギーを浸透させたのです。
◆株式会社アジアンドキュメンタリーズ 代表取締役社長 兼 編集責任者◆
2018年8月に動画配信サービス「アジアンドキュメンタリーズ」を立ち上げて以来、 ドキュメンタリー映画のキュレーターとして、 独自の視点でアジアの社会問題に鋭く斬り込む作品を日本に配信。 ドキュメンタリー作家としては、映文連アワードグランプリ、 ギャラクシー賞などの受賞実績がある。