原題:Mother/撮影地:タイ・スイス/製作国:ベルギー・オランダ
監督:クリストフ・ビルセン
タイの第二の都市、チェンマイから数キロ離れた小さな村ファハム。 ここに認知症の患者を受け入れる介護ホーム「バーン・カムランチャイ」があります。 入所しているのは、十数人のヨーロッパ人。ここで働くポムは、 スイスから来た女性を1対1で介護をしています。ポムはより良い生活を送るために、 自分の子どもたちの近くにいることを犠牲にし、ここで働いています。一方、スイスでは、 家族が認知症の母親に別れを告げ、彼女を遠い外国の見知らぬ人の手に渡すことを決意します。 苦渋に満ちたそれぞれの思い。残酷なようで、それは最大の愛でもあるのです。
鑑賞日:9月14日
時間:15時
制作年:2019
作品時間:82分
タイの介護ホーム「バーン・カムランチャイ」は、一人のスイス人が立ち上げました。 彼は、認知症を患った母親を持ち、介護に追い詰められた父親を自殺で失いました。 しかし、スイスでの長期介護は費用が高く、母の行動範囲を狭めたり、 大量の薬物投与で落ち着かせたりしたくないという思いもあり、苦渋の決断をします。 母親をタイに連れていくことにしたのです。彼は仕事の経験で、タイについてよく知っていました。 それは、生活費や給料水準が低いことだけが理由ではありません。 何よりタイでは、老人は尊敬され、若者が年配者の面倒を見ることが当たり前の社会だったのです。 タイの介護士は、24時間、彼の母親を介護しました。 彼は、ここでの介護が家族にも患者にも意義があると確信し、1年後に施設を設立したのです。 今後、認知症が大幅に増える日本でも、新しい介護モデルが求められることはいうまでもありません。
◆株式会社アジアンドキュメンタリーズ 代表取締役社長 兼 編集責任者◆
2018年8月に動画配信サービス「アジアンドキュメンタリーズ」を立ち上げて以来、 ドキュメンタリー映画のキュレーターとして、 独自の視点でアジアの社会問題に鋭く斬り込む作品を日本に配信。 ドキュメンタリー作家としては、映文連アワードグランプリ、 ギャラクシー賞などの受賞実績がある。
チェンマイの村で交差する、介護と別れの現実。
外国で母を託す家族と、介護に生きるタイ女性。
バーン・カムランチャイに映る、愛と犠牲の話。