原題:Duck Academy/撮影地:タイ/製作国:タイ、フランス
監督:スリヨン・ジョンリーパン
タイの農業地帯ロッブリー県で、農薬を使わない稲作を行なっている農家に密着した。 74歳のソムヌックは、国民皆が健康だった頃の農業を取り戻そうと、無農薬栽培に挑む。 彼のパートナーは3000羽のカモ。生後5ヶ月のメスの雛を引き取り、数ヶ月かけて訓練する。 7階建てのカゴを載せた「バス」でカモたちを運び、水田に放つ。 カモは田んぼで古米を食べたり害虫を食べたりして自由に過ごし、ソムヌックの笛の合図でバスに戻る。 農薬代が不要な上に餌代は安くなり、カモの卵でも収入を得る。 農薬使用が当たり前のタイの農業界では極めて異端な存在だ。 「バカだと思われても、自分の道を進む」と信念を固めるソムヌックの、 自然への畏敬とカモたちへの愛情が伝わってくる作品だ。
鑑賞日:3月8日
時間:15時
年制作:2019
作品時間:52分
タイの農薬輸入額は1990年代後半から急激に増加しました。 タイでは日本における農協のような指導を行う団体がないため、生産者は設備、生産、 販売の全ての業務などを自己判断で行います。農産物の発育が悪ければ化学肥料を投入し、 害虫が発生すれば農薬を散布、 雑草には除草剤を撒くといった具合に、 農薬使用量が増えやすい傾向にあります。 政府は2019年10月、 「パラコート」や「グリホサート」など安全性の疑いが指摘されている農薬の使用禁止を決議。 当初は12月から農薬使用を禁止するとしていましたが、11月下旬に方針を見直し。 2種の使用禁止は6カ月延期し、1種は使用をわずかに制限するにとどめました。 突然の見直しの背景には、タイ国内の農家の反発があったのです。
◆株式会社アジアンドキュメンタリーズ 代表取締役社長 兼 編集責任者◆
2018年8月に動画配信サービス「アジアンドキュメンタリーズ」を立ち上げて以来、 ドキュメンタリー映画のキュレーターとして、 独自の視点でアジアの社会問題に鋭く斬り込む作品を日本に配信。 ドキュメンタリー作家としては、映文連アワードグランプリ、 ギャラクシー賞などの受賞実績がある。
3000羽のカモが守る、無農薬の田んぼ
カモと農家、自然と生きる挑戦
農薬ゼロの夢、笛の音と共に