原題:AGENT OF HAPPINESS /撮影地:ブータン/製作国:ブータン、ハンガリー
監督:アルン・バッタライ、ドロッチャ・ズルボー
ブータンには国民の幸福度を測る「幸福度調査」がある。 調査官は政府が臨時採用した75人。主人公の青年はその中の1人だ。 年代や性別、職業も異なる人々に聞き取りを行い、その幸福度を指数化する。 指標は人によってさまざまだ。牛の数、カルマへの意識といったお国柄を物語るようなものもあれば、 不安感や満足感など、人間にとって普遍的な感覚もある。 経済的に恵まれていなくても幸福度が高い人もいれば、その逆もある。 生きづらさを抱えている人や、逆境に耐える人、人それぞれに異なる幸福度から何が見えてくるのか。 主人公の調査官は、ネパール人という理由だけで市民権を奪われ、正規雇用の職に就けない。 幸福度調査の現場から、幸せの意味を問いかける作品だ。
鑑賞日:7月21日
時間:15時
制作年:2024
作品時間:94分
ヒマラヤ山脈の東端、九州ほどの大きさの国土に78万人が暮らすブータン王国。 1972年から、国民が実感する幸福度を表す「国民総幸福量(GNH)」 を国の政策の中心に置いていることで知られています。 GNHは「持続可能な開発の促進」「文化的価値の保存と促進」「自然環境の保全」 「善い統治の確立」という4つの柱と、教育や生活水準など9つの領域、 さらに領域を細分化した33の尺度で構成され、5年に1度全国的な調査を行っています。 幸福を重視するブータンで、蚊帳の外に置かれているのがネパール民族です。 1985年に当時の国王が「一国一民族主義」政策を掲げ、ネパール民族の市民権を剥奪。 抵抗者は逮捕や拷問などの仕打ちを受けました。 ブータン政府は現在までに10万人以上のネパール民族を国外に強制退去させています。
◆株式会社アジアンドキュメンタリーズ 代表取締役社長 兼 編集責任者◆
2018年8月に動画配信サービス「アジアンドキュメンタリーズ」を立ち上げて以来、 ドキュメンタリー映画のキュレーターとして、 独自の視点でアジアの社会問題に鋭く斬り込む作品を日本に配信。 ドキュメンタリー作家としては、映文連アワードグランプリ、 ギャラクシー賞などの受賞実績がある。
幸福とは何か?ブータンの調査官が問う。
数字では測れない、心の豊かさを探して。
市民権がなくても、幸せは感じられるか。